柿田医院ブログ

2020.09.11更新

数年前に閉鎖した自作サイトに書いた記事です。

【やけどをしたら服を脱がすなは本当か?】

 服を着たまま熱湯などでやけどをしたときに無理に服を脱がせると皮がめくれるので、脱がさずに上から水をかけるべきであるという記載を救急マニュアルなどで目にします。しかし私は、服を着ていた部分の方が深いやけどになったケースを多数経験しており疑問を持っています。

 着衣部のやけどが深くなる理由は、熱湯がしみ込んだ布が皮膚に貼りつき、高温状態が長く続くからです。例えば 顔から胸のやけどでは顔は一見派手でも結構きれいに治りますが、服を着ていた胸の部分は深くなっていたり、腕のやけどではTシャツの袖の境目で深さが明らかに異なる場合がよくあります。やけどは高熱にさらされている時間が長いほど深くなりますので、すぐに温度を下げるべきですが、水をかけようと手間取っているとどんどん深くなってしまいます。やけどの深さは数秒で決まるのです。また「なつい式湿潤療法®」では、水ぶくれの膜は細菌の感染源になるという考えから、積極的に取り除いたうえで傷を乾かさないような材料で覆うという方針ですので、膜が破れることを傷の悪化要因とは考えていません。そのため私は一刻も早く温度を下げるために直ちに服を脱ぐことをお勧めしています。脱ぐゆとりがなければ服をつまんで皮膚から浮かせるだけでも効果的かと思います。 実際の症例(パワポファイル)をご覧になりたい方はご連絡下さい。

追記: 受傷した際は直ちに素肌以外の服に隠れている部分を確認してください。医療広告ガイドラインの規制があり、治療例の写真を公開できないのが残念ですが、熱湯レベルであれば素肌はまず浅いやけどで済み、着衣部との差は歴然たるものです。100℃を超える油でも素肌なら大体大丈夫です。時々すぐお子さんの服を脱がせ水疱が破れたことを初診時の医療機関で咎められ、その後に当院に来られた時に落ち込んでいる親御さんがおられますが、「気にすることはありません。あなたが正解です。」と伝えています。
 因みにお子さんのやけどで多い受傷機転は、テーブルの上の熱い汁物(お子さんが小さいうちはテーブルクロスはやめましょう)、電気ケトルのコードをひっかけて倒す、調理中の鍋に手をかける、放置したアイロン・ヘアアイロン、花火などです。アイロンや火はお湯よりずっと高温なので、一瞬でも深いやけどになります。いずれも注意すれば予防できることです。保健所で一般向けに講演した際の小児救急のパワポファイルをご覧になりたい方はご連絡下さい。

投稿者: 柿田医院

2020.09.03更新

 当院では皮膚の保湿やケガの治療の際に、ワセリン以外の塗り薬は積極的にはお勧めしていません。以下その理由です。
①保湿剤
 ワセリン以外で保湿剤と呼ばれる製剤には、肌なじみをよくするためにたいてい界面活性剤が入っています。界面活性剤とは石鹸などの洗剤の主成分で、水と油を混ざりやすくする作用があり、これにより油汚れなどが落ちやすくなるわけです。さて、これを人の皮膚に使うということは、皮脂を落としかねないということです。以前の記事で皮脂と善玉菌は皮膚を乾燥や外敵から守るバリアとしての役割を果たしているもので、石鹸で強く体を洗うことはそのバリアを自ら破壊する行為ですと書きました。皮膚に界面活性剤はよろしくないのです。また他所で出されたワセリン以外の保湿剤で皮膚炎症状が悪化し、中止してもらったら治ったという経験もあります。もっとも保湿剤は塗った後にゴシゴシと強く擦るようなことはしませんから、他で処方されていて使ってもなんともなくて、むしろ調子が良いから欲しいという方には細かいことを考えずに処方することもあります。界面活性剤のことは湿潤療法の提唱者・夏井睦先生の受け売りです。「新しい創傷治療」のサイト内で”界面活性剤”と検索してみてください。頭髪にもシャンプーを使わず、お湯だけで洗う”湯シャン”のメリットについても勉強できます。余談ですが、完全な湯シャンに抵抗のある人は、まず頭皮だけをお湯で充分に洗い(皮膚を傷つけないように爪は立てず)、シャンプー液は極力頭皮につかないように、髪の毛だけをシャンプーで洗うイメージでおこなうと、髪のべたつきはサッパリしつつも皮脂が保たれ頭のかゆみや皮膚炎などのトラブルが改善します。

②キズ薬
 ケガの治療を受けた際に、抗生剤の入った軟膏を処方されたことがある方は多いのではないかと思います。一番ポピュラーなものは0.1%ゲ○タマイシン軟膏ですが、他にもいろんな種類があります。抗生剤は傷についたばい菌をやっつけるという目的で入っているわけですが、これによりひどいアレルギーを発症することがあります。同じ以前の記事で、口の周りの荒れた皮膚に付着した食べ物は異物として認識され、食物アレルギーの原因になりやすいという話を紹介しました。これと同じことが傷口に塗った薬にも言えるのです。皮膚と言うのは防衛機構が発達した組織で、外部からの侵入者を敏感に察知し、一旦異物と認識(皮膚感作)した物質が再び接した場合には炎症反応で排除しようとします。スギ花粉症は花粉が目や鼻の粘膜から入るため、防衛策として涙や鼻水を出して洗い流そうとするアレルギー反応が起きますが、皮膚にはそうした機能がないので炎症細胞を呼び寄せて対抗しようとします。この反応が過剰になると全身に影響が生じ、蕁麻疹が出たり、ひどい人はアナフィラキシーを起こしたりします。当院で処方した訳ではありませんが、ゲ○タマイシン軟膏のアレルギーがある患者さんをお二人(お一人はアナフィラキシー発症)知っています。稀なことではありますが、自らの処方で患者さんをアレルギーにしてしまうのは避けたいと考えるようになりました。以前より耐性菌誘導の問題から使用を控えようという動きはありましたが、あんまり気にせず99.9%のワセリンとして処方していました。しかし近年の皮膚感作の考え方、実際の患者さんに出会ったことで完全に処方をやめました。因みにリ○デロンVGという軟膏もご存じかもしれませんが、このGはゲ○タマイシンのGですので、最近はG抜きのリ○デロンVしか処方していません。液体の消毒薬でも同じ理屈でアレルギーがあり、また細胞毒性の問題もあるため、当院ではキズの処置は原則生理食塩水による洗浄とワセリン塗布+被覆材だけです。

 以上のような理由から、当院では保湿剤としてもケガの軟膏としてもまずワセリン(プロペト)をお勧めしています。また内服の抗生剤も極力処方しない(これにも話せば長い理由があります)ので、あの医者は効く薬を出してくれないと感じられるかもしれませんが、一応職業上のポリシーですのであしからず。

投稿者: 柿田医院

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