柿田医院ブログ

2020.10.20更新

 「衛生仮説」とは、子どもの頃の衛生環境が免疫機能の発達に影響するという考え方です。現代でアレルギー疾患・自己免疫疾患が増加しているのは、過剰な衛生管理により免疫バランスを崩してしまうことが原因であるという見方があります。また免疫機能が完成していない幼いうちにいろいろなものに接しておいた方が、その後のアレルギー疾患の発症が少なくなることが分かっています。


 食物アレルギーの対策では、昔は原因となりやすい食物の摂取を遅らせていましたが、最近はいろいろな種類のものを早めに開始することが勧められています。食べ物以外の環境因子も同様です。東西ドイツ合併後、同じ地域の住民で比較すると、生活水準が低く衛生状態が良くなかったと思われる東ドイツ出身者よりも、西ドイツ出身者の方がアレルギー疾患が3-4倍多いとか、家畜に接する機会の多い農村地帯の人、保育園に早くから通っている子、多人数の兄弟がいる下の子ほどアレルギーが少ないというデータがあります。いずれも幼いころに多用な微生物・抗原物質と触れ合う機会が多いほど、アレルギーが減ることを示しています。また、抗生物質投与による微生物の駆逐による免疫バランスの変化も問題視されています。


 「旧友仮説」とは、人間の体には昔から大切な役割を果たしてくれる善玉菌がいて、共生関係にあるという考え方です。抗生物質の使い過ぎで腸内の善玉菌を殺してしまい免疫バランスを崩したり、体の洗いすぎで皮膚を外敵から守るバリア機能に重要な役割を担う善玉菌を排除してしまうこともいろいろなアレルギー疾患の原因になります。特に皮膚は最近食物アレルギーとの関連が非常に注目されています。食べ物は、口から消化管経由の正常なルートで吸収されると体が今後も受け入れて大丈夫と認識しますが、洗いすぎて肌荒れを起こした皮膚の傷などに接すると異常なルートからの侵入者として免疫細胞が記憶し、それ以降は口から摂取してもアレルギー反応を起こすようになってしまうことがあります。

 

 また、保育園に通い始めて最初の頃はしょっちゅう熱を出し毎週のように病院に通うことになる子はよくいますが、年長さんくらいになるとほとんど病気をしなくなります。集団生活でお友達と触れ合い、いろんな感染症を経験し強くなっていくのです。

 

 「適度に汚れる遊び」はこどもの免疫機能を強化し、アレルギーになりにくく感染症にも強い体にできる可能性があります。過剰な清潔志向・不要な抗生物質信仰は止めましょう。どろんこ遊び万歳。

投稿者: 柿田医院

2020.10.15更新

 10月9日の閣議後にウェブカメラを介したオンライン診療の初診の恒久的な解禁が発表されました。当院でも数年前から導入していますが、個人的には今回の解禁で劇的に何かが変わるとは考えていません。    
 新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)流行前までは、オンラインの保険診療は再診のみ可能で、例えば風邪をひいた、急にお腹が痛くなった等の初診では使えませんでした。
 医療機関でのコロナ拡大防止策としての、今年4月の暫定的な初診認可を第一次解禁とすると、今回の恒久的な認可は第二次解禁と言えます。
 第一次解禁直後に、これは収益アップにつながるかと浅ましい考えがよぎったのですが、実際はそうでもありませんでした。その際はカゼ症状でオンライン診療を希望する方が増えましたが、ご心配は主にご自分がコロナかどうかでした。直接対面診察をしても検査しない限りは確定診断ができない病気です。カメラ越しに顔を見たところで分かるはずもなく、お役にたてることはあまりないのです。 
 実際にできたのはカウンセリングのみで、それも「今のところ心配は低そうですが、もっと調子が悪くなったら保健所に連絡してください。」と言うしかありません。薬も詳しい診察もしないで安易に処方できるものでもありません。 
 それを繰り返すうちに虚しく、心苦しくなり、予約が入ると予診票を読んで、コロナが心配と言う方には正式な診察前に無料のチャットシステムで「具体的にお役に立てず結局保健所へのご連絡をお願いするだけで診察料をいただくことになってもよろしいですか?」と尋ねることにしたところ、大半の方は診察をキャンセルしてくださいました。
 対応したのは、それでもいいからとにかく医師と話をしたい、コロナに関する詳しい情報が欲しいという方だけになりました。病気の詳しい情報が欲しいという明確な目的があれば、オンライン診療によるカウンセリングも悪くありませんが、多くの急性疾患への対応はなかなか難しいものです。
 熱のある人は当然コロナ以外の病気も、お腹が痛い人は場合により虫垂炎も考えなければなりませんし、のどが痛い人は溶連菌の検査も考慮しなければ、必要かつ適切な治療には繋げられません。
 結局ウェブカメラがあったところで電話だけよりましになるのは、見るからにしんどそうか、顔色・表情はどうか、肩で息をするような呼吸困難がありそうかが分かるぐらいで、急病の診療ツールとしては不十分と言わざるを得ず、それにより責任をもって大丈夫ですと言えるケースはほとんどないのが実情です。よほど豪気な医師なら気にしないかもしれませんが、少なくとも私にとっては大変なストレスになりますので、これによる急性疾患の初診数の増加は望むところではありません。 
 一方活用法が少し見えてきたのは、当方の得意分野のケガややけど・皮膚トラブルの診療です。ウェブカメラの解像度では実際の状態の観察は難しいのですが、システム内の機能できれいな写真も事前に送ってもらえますし、実際にどのような治療材料を用いて、どのような処置をすればよいかはライブで指導出来ます。 
 今回一番お役に立てたと感じたのは、赤ちゃんのお尻の皮膚炎でした。一週間他で貰った薬をつけても改善せず、再診の指示はうけているが、コロナ拡大の中を外出したくないという当院初診の方でした。ウェブカメラではよくわからず、ちゃんと撮った写真を転送してもらうと典型的なカンジダ皮膚炎で、すぐに塗り薬をご自宅近所の薬局にファックスし、その日のうちに塗り始めてもらい5日後の再診の際はきれいに治っており、とても感謝していただきました。 
 今後初診のオンライン診療に関しては、内科的な急性疾患よりも、視覚的な情報が重要な外科的・皮膚科的疾患での運用に重点を置いて行きたいと考え始めています。

投稿者: 柿田医院

2020.10.11更新

 先日医療の現場ではとりあえず悲観的な説明をしがちだと言う話をしました。医療者としては後に医療過誤との非難を受けぬよう、想定される最悪の事態に関しては、予めご承知おきいただきたいという事情はご理解いただけると思います。
 
 それとは別に私が問題だと思うのは、悲観論をかざして人の弱みにつけ込む治療にかこつけたビジネスです。
 それは高額な民間療法や自費診療がしばしば問題になるがん治療、アトピー治療、やけど治療などで特に顕著です。

 結論から言うとこれらの大きな問題点は、うまくいけば自分のおかげ、もし結果が悪くても自分の治療でここまでの状態にできた、保険診療ではここまで出来なかったという理屈が成立してしまうということです。一人の患者さんの治療経過については、いくつか選択肢のある治療法の優劣を、全く同じ時系列で直接的に比較することができないからです。

 得意分野のやけど治療を例に話を進めます。当方は元々小児外科医で、小児の患者さんが大半なのですが、やけどをさせてしまった親御さんは罪悪感に苛まれ、なんとしても跡形もなく治したいという気持ちになります。受傷当日は地元の救急病院で治療を受けますが、帰宅後に深夜までネットで調べまくり、宣伝上手な自費診療のやけど治療院を運悪くみつけてしまいます。

 保険診療の病院も目には入りますが、この時の心理はお金はいくらかかってもいいから「有名な先生」の治療を受けるということに傾いているので、翌日とりあえずそちらを受診すると、「これはひどい!うちの治療を受けないと醜い痕が残る!!」と悲観的な見通しを告げられ、きれいに治すには一回数千円の軟膏処置に絶対毎日通院が必要と言われます(何故か日曜日は自宅処置でOK)。ここで通院治療を続ければ綺麗に治る、途中でやめたら無駄になると思い込んだら通院はやめられません。遠方だと治療費だけでなく交通費も馬鹿にならず、子育て世代の若い親御さんが月に10万円を優に超える出費を強いられます。その出費に耐えられず、泣く泣くそちらの治療を断念し、保険診療の当院を訪れるという方が年に数人おられます。

 その時の親御さんは、お金が無くて最高の治療を受けさせてやれなくなったという心理でとてもしょんぼりしています。時々受傷時の写真を撮っている方がいて、見せてもらうと明らかに軽症で、これで毎日通院して高額な治療費を取られたのかと気の毒になり、最初からこちらに診せてくれればよかったのにと思うこともありますが、スタート地点が違い実際にはこちらは途中の状態からしか断定的なことが言えないのが歯がゆいところです。それを盾に自費治療院は、最初に悲観的な見立てをして、きれいに治れば自分のおかげとして名声を得て、多少痕が残っても自分だからここまでにしてあげられたという理屈で非難を避け荒稼ぎできるわけです。
 厄介なのは、実際には誰がどうやっても治るような軽症の患者さんが大勢受診して「○○先生のおかげでとてもきれいに治った」とネットに書き込み、そこの評判を上げてしまうことです。ネットの大きな落とし穴であり罪であるとも言えますが、私が実践している「なつい式湿潤療法®」もネットで広がり根付いてきている経緯があるのでジレンマを感じてしまいます。
 自費診療の中には、実際に有効でも保険診療は認可されていないというものもあり得ます。事前に怪しい治療かそうでないかを完全に見分ける方法はありませんが、もし本当に優れた治療であれば医療業界全体が注目し、大勢の医師が師事を仰ぎ拡散し、全国的なスタンダードになっているはずです。長い間小規模で独自の秘伝の薬で閉鎖的な治療をして、高額な治療費を取るところはかなり怪しいと思わざるを得ません。
 やけどに限らず、高額な民間療法・自費診療が選択肢にある場合は、まず先に保険診療で認められている範囲の治療法の中で、ネットで評判の良い医療機関を探すのが賢い選択だと思います。

 曹洞宗の僧侶である私の兄は、典型的な悪徳宗教の手口に似ていると言っておりました。ご注意下さい。

 

投稿者: 柿田医院

2020.10.10更新

            やけどイラスト

 医師は大抵病気やケガの見通しに関して、まず想定される悪い方のことから説明します。いまどきは、治療経過が好ましくない場合に、医療者側の落ち度でなくても医療過誤を疑われかねないご時世なので、多少防衛的になるのは仕方ない面もありますが、問題はその「程度」です。

 やけどの治療の際に、私も初対面の患者さんには最初からあまり楽観的なことは言いません。それには上記の理由の他に、やけどは数日経過を観ないと本当の深さが分からないということもあるからです。再診のときには患者さんの性格も少しは把握できていますし、やけどの程度も判定できますから、徐々にこれは軽いやけどみたいだねとか傷跡は残らないんじゃないかなとか明るい見通しをお話できるようになります。ところがやけどや外傷の治療で当院に来られる方の中には、最初の医療機関で受傷直後から、これは深いから絶対に傷跡が残るとか、皮膚移植しないと治らないと言われ、かなり落ち込んでいる方が少なくありません。

 私は2002年の開業当初より夏井睦先生の提唱する「湿潤療法」を実践して18年になりますが、他の医療機関で皮膚移植が必要と言われた数十例のケースのほとんどは手術せずに治すことができ、実際に結果的に手術を要した症例はほんのわずかです。結果的にと書いたのは、一度皮膚が再生する状態(上皮化と言います)までは全例で達成でき、その後に傷痕のつっぱり(瘢痕拘縮)のために手術を要した数例を経験しただけだからです。ですから、受傷直後の初期の段階で皮膚移植をしなければ絶対治らないという言葉は、医師患者間のトラブル回避のための防衛的な意味でやむを得ないレベルを逸脱していると思います。なぜこのような説明になるか、考えられる理由は二つあります。
 ①本気でそう信じている。
これは湿潤療法以前の従来の治療しか経験が無く、教科書に載っている~度だったら植皮の適応というような知識に縛られているが故の発言です。受傷直後に熱傷深度を断言してしまったり、医療知識のアップデートを怠っている罪はありますが、悪意のあるものではないと言えます。
 ②皮膚移植を受け入れさせるための方便
邪推であればよいのですが、皮膚移植は高額で収益性が高い手術です。利益を優先するバイアスがかかると多少強引にでも手術につなげるために、早い段階から患者さんに刷り込み、受容させるための強めの説明になるということもあるかもしれません。


 いずれにしても皮膚移植の痕はきれいなものではなく、正常部の皮膚にも傷をつけることになりますから、しないで済むに越したことはありません。私は、広範囲でなければ受傷直後から皮膚移植の判断をする必要はないものと考えています。そのような状況が生じたら全国の湿潤療法を実践している医師にご相談下さい。

 

投稿者: 柿田医院

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