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湿潤療法の実際4 スポーク外傷




                                    
スポーク外傷
自転車の後ろに乗っていて、踵をスポークに巻き込まれて起こる外傷です。ほんの一瞬の出来事ですが、普通の擦過傷など よりも重症で、治療期間も数ヶ月にわたることがしばしばあります。
初診時 2被覆材 3翌日の状態 4翌日の傷
五日目 6一ヶ月 743日目
 こちらは当院で治療した6歳の女の子の例です。受傷後都内の某大学病院の形成外科に通院していましたが、経過が思わしくなく、 植皮が必要かもしれないと言われ、他の治療法をインターネットで検索し、受傷後11日目に当院にご相談に来られました。
1)当院初診時の状態。右踵部の外側に長径4.5cm、幅1.5cmの皮膚欠損 があり、中心部には黒っぽい壊死組織があります。この頃には私もこれより重症で閉鎖療法で治った例を沢山経験していたので、初診時に「植皮は必要ありません」と断言し、 早速ハイドロコロイドによる閉鎖療法を開始しました。2)デュオアクティブETを貼ったところ。3)翌日の状態。浸出液のためハイドロコロイドがふやけて白くなっています。 まだ浸出液が多く半日ほどでふやけてドロドロになってしまうので最初の頃は1日2回お母さんに貼り替えてもらいました。4)ハイドロコロイドを剥がしたところ、中心の 壊死部がふやけて白くなってきていました。5)閉鎖治療開始より5日目の状態。周辺部から上皮化が起こっており、壊死組織が脱落し、下から肉芽(にくげ)が形成されています。 6)さらに一ヵ月後には周辺部は完全に上皮化し、中心の肉芽を残すのみとなりました。7)閉鎖療法開始から43日目には中心部も完全に上皮化していました(ピンぼけで申し訳ありません)。

 前にも書きましたが、少々治りにくい傷をみると、割に早い段階で植皮の可能 性を示唆する医師が多いように思います(かつて私もそうでした)。有名大学病院の形成外科でさえそうい う事を言うのです。かえって形成外科の医師達の間では、植皮があまりにも日常的に 行われているので、たいしたことだとは思わなくなっているのかもしれませんね 。でも患者さんとしては、できれば手術したくないんじゃないでしょうか。植皮 するためにはどこかから正常な皮膚を採らなければならず、そこに傷が残ります し、何日間か入院も必要です。今回のケースでの植皮のメリットは治療期間が短 くなることぐらいでしょう。確かに深い傷の場合、閉鎖療法では植皮よりも治療 期間は長くなります。しかし入院の必要は無く、日常生活にもほとんど支障はあ りません。実際このケースでは運動や入浴の制限は全くしませんでした。通院も 週1〜2回程度でしたから、患者さんもそれほどの負担では無かったとおっしゃ っていますし、なにより植皮せずにすんだことを喜んでおられました。
 患者さんから、有名大学病院よりも頼りにして頂けるという光栄に浴する機会 は滅多になく、町医者冥利に尽きることではありますが、これはやはり正常な状 態とは言えません。早く閉鎖療法が外傷の一般的な治療となって、どこの医療機 関でも当たり前に受けられるようになることを望みます。
実際の治療例→1擦過傷 2指先部欠損 3やけど 4スポーク外傷 5低温やけど   6顔面熱傷