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湿潤療法の実際6 顔面熱傷




                           
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 こちらは熱湯により顔面左側に熱傷を負った1歳の男の子です。某大学病院で救急処置を受け、「痕が残るかもしれない」・「皮膚移植が必要かもしれない」と言われ不安になり、ネットで検索して受傷2日後に当院を受診しました。初診時は創面は乾燥し痂皮となり一部に乾いた水疱膜が貼りついていました(写真1)。被覆材としてハイドロコロイドも考えましたが範囲が広く、乳幼児は自分ではがしてしまうことが多いので、なるべくコストがかからず、はずれにくい方法として、 創面にはプラスチベースを塗り、台所の三角コーナーに使う穴あき水切り袋(最近はネットタイプのものが多いですが、都内スーパーではサミットかピーコックに大体あります)を頭からかぶせ、顔面右側の部分を切り取りました(写真2)。

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ビニール袋の上はプレスネットをかぶせて帰宅させました(写真3)。こうすれば滲出液が多いときはビニールとネットの間にガーゼやキッチンペーパーを挟んであてて吸収させることもできます。 尚、万が一にも窒息事故がないよう、親の目が届かないときは袋を外して、プラスチベースを塗りっぱなしにするだけの処置にするなど、十分注意して下さいとお話しました。自宅で同様の処置をしてもらい、再診時にはお母さんが市販の腹巻に穴をあけて作った自作のカバーをしてきてくれました(写真4)。

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初診より4日後には傷の表面に白くドロドロしたものが見られるようになりました(写真5)。一見膿のようですが化膿しているわけではなく、これは湿潤療法でカサブタや死んだ組織が落ちていくときの正常の過程で、いわば乾いてミイラ状になってしまった皮膚が湿潤環境によって正しく腐った(?)状態です。ドロドロを丁寧に拭い取ると新しい皮膚が再生し始めていました(写真6)。


初診より14日後には上皮化が完了しています(写真7)。一般に傷痕が残る残らないの境目は2週間で上皮化するかどうかが目安になりますので、おそらく将来的にも問題ないと思われます。いずれ長期経過の写真をいただくことになっていますので掲載する予定です。
2012.2.18記


お母さんに「治療で苦労された点」、「ご自分でされた工夫」、「治療に対するご感想」をご回答いただきました↓

『治療で少し大変だった点』

1.子供がビニールを被るのを嫌がり動いてしまうので、素早く処置を済ませなければなりませんでした。
  頭を固定してくれる人がいれば楽ですが、一人での処置は最初手間取りました。

2.食事をすると口元のビニールの中に食事カスが入るので、食事が終わるたびにビニールを変えていました。

※ただ、上記1,2とも大変だと感じるのは最初だけで、慣れてしまえばなんてことはないです

『今回の工夫』

1.穴あき水切り袋を頭へ被せるにあたって

  ・穴あき水切り袋を頭に被せる前に、ある程度(右半分がでるくらい)カットしました。
   ※被せてからハサミを使うと、子供が動き、危なかったので

  ・被せた穴あき水切り袋は、布テープで3か所止めました。
   ※被せる前に、布テープを長めに3枚切って準備しておきます

  被せ方としては、火傷した箇所にビニールが密着するように被せ、首元の穴あき水切り袋のたるみを首の後ろで束ねて1ヶ所で止めます。次に、頭の左右にある穴あき水切り袋の角を後ろに引っ張るように倒して、それぞれ布テープで止めます。寝返りしても一番ズレにくく、処置も簡単なので、何度もやっているうちに、この方法に落ち着きました。

2.顔のカバー

  外に出る際、さすがに穴あき水切り袋を被せただけではかわいそうなので、子供用腹巻に切り込みを入れて、マスクにしました。

3.布団への処置

  寝返り等で被せたビニール袋がズレたりすると、敷布団がプラスチベースでベトベトになってしまうので、頭がのるあたりに未使用レジャーシートを敷き、ズレない様にガムテープで止めました。

『今回の治療への感想』

自宅での処置に特別な技術がいらず、(使用したのも、普通にスーパーで売ってるゴミ袋でしたし)ここまで綺麗に治せたので、とても驚いています。

ネットで過去の治療例等も見ていましたが、実際我が子が回復していくのを目の当たりにし、湿潤療法を選択して本当に良かったと思っています。

以前のように大泣きするような処置(消毒液やガーゼはがし)も無くなったので、親としても、家での処理で気が滅入ることがなくなりました。むしろ、日が経つたびに、今日はどこまで回復してるかな?と、肌の状態を確認するのが楽しみになるくらいでした。

また、上皮化していく過程で、壊死した皮膚が膿のように見え、とても不安になったときがありましたが、先生にメールで状況をお知らせしたところ、すぐに返信をいただけて、安心して治療を継続することができました。遠方であったため、すぐに受診できないという懸念は、上記のような対応をしていただけて吹き飛びました。





約二年後。色の差もなくなりどこをやけどしたかわからなくなりました(写真8)



実際の治療例→1擦過傷 2指先部欠損 3やけど 4スポーク外傷 5低温やけど